1.ヒトインスリン受容体の構造と機能およびその異常の解析 我々はすでにヒトインスリンレセプター(IR)の一次構造を明らかにし、さらにIRのβサブユニットのチロシンキナーゼがインスリン作用伝達に必須であることを明らかにした。今回千葉大学医学部第二内科のグループと共同研究で、インスリン抵抗性の糖尿病患者の中にIR遺伝子のβサブユニットをコードする部位に大きな欠損のあるものを見出した。これは1対の遺伝子の一方に起っており、母親も同じ症状と遺伝子変異をもつことから、優性遺伝をするものと考えられ、今後、糖尿病患者の中に各種のIR遺伝子異常が見出されるものと予想される。いままで病因の不明であった糖尿病の中のインスリン非依存性糖尿病の原因究明に役立つものと思われる。 2.ヒトインスリン受容体遺伝子の発現調節機構の解析 我々はすでにヒトIRcDNAをプローブとして正常ヒトIR遺伝子のプロモーター領域を単離し、その構造を明らかにし、さらにIR・N末端より上流600塩基対にあるGーCboxを欠損すると遺伝子発現活制が1/10以下になることを見出している。今回この部位に転写促進因子であるSp1タンパクが結合することをDNase1 footprintingにより証明した。今後さらに他の調節因子タンパクを見出し、IR遺伝子発現調節機構の全体像を明らかにしたい。
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