研究概要 |
我々はプローブのDNA塩基配列内に存在するチミン(T)に紫外線を照射し、チミンダイマーを形成させ、組織切片とのin situ hybridizationの後、チミンダイマーに対する特異的抗体でDNAプローブの局在を検出する新しい方法を開発した。ニトロセルロース上にpBR322 DNAを焼きつけT-Tダイマー化pBR322 DNAをプローブとしてDot blot hybridizationを行なったところ1pgまで検出され、in situ hybridizationでmRNAを検出するのに十分な検出感度であった。DNAのT-Tダイマー化に必要な紫外線量は3000〜6000ジュール/m であるが平均的な至適量は5000ジュール/m であった。 このチミンダイマー法により種々の遺伝子DNAをプローブとしてin situhybridizationを行なった。DNAプローブと組織(あるいは細胞)の組み合わせは次の通りである。C-myCがん遺伝子:ヒト胸腺腫およびrat testis,K-rasがん遺伝子:肺癌細胞T883,胎盤型アルカリフォスファターゼcDNA:子宮頚部癌,成長ホルモンcDNA:ラット下垂体,Herpes simplex type1DNA;Vero cell,PCNA/cyclin cDNA:rat testis。いずれの症例においても従来のDNPラベル法に比べて非特異的に染まる細胞が著しく減少し、チミンダイマー法の特異性の高いことが示された。特にc-mycに関してはin situ hybridizationによるmRNAの局在だけでなく、合成ポリペプチドを免疫して得た 抗c-myc抗体を併用し、c-mycの遺伝子産物の局在も同時に検索した。その結果、抗体陽性組織(細胞)とin situ hybridization陽性組織(細胞)とは極めて高い一致をみた。
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