難治性炎症性疾患と総括される疾患群の病理像はマクロファージ(Mφ)を主なエフェクターとする肉芽性病変に代表されるが、その原因の多くは起炎体の性状よりも、そのベースに宿主免疫応答回路の異常が存在することに起因していることが、近年の免疫応答系の解析から考えられる。即ち、Mφを含む単核貧食系細胞は免疫複合体やリンホカインの刺激あるいは調節下にあると考えられ、これらの細胞が産生する種々の可溶性因子は直接あるいは組織固着細胞の刺激を介して組織傷害を誘導する。一方、Mφは種々の可溶性因子を介してT細胞機能に制御を加える。それ故、免疫回路のひずみのパラメーターと目されるリンホカインカスケードの異常や抗体産生系の異常は、多様なMφの機能を様々な形で修飾し、またフィードバック的に免疫応答系そのものを修飾し、こういった細胞相互反応の病的状態が難治性炎の発症につながるものと考える。本研究の目的は第一にこの作業仮説を実際、正常あるいは種々の免疫応答異常マウスを使用した実験系で明確にすることにある。そのために(1)免疫複合体の質的要因が炎症反応に与える影響を主としてMφ機能を介して解析した。又(2)免疫機能異常を誘導する突然変異遺伝子の発現が宿主Mφの機能に及ぼす影響を解析しそのエフェクター因子の分離精製を試みた。一方(3)このMφの機能修飾を制御すると考えられたヒトT細胞株由来のMφ分化誘導活性を有する因子の精製・単離を行った。第二の目的は、難治性炎の主役と考えられるこの病的細胞相互反応を引き起こす宿主遺伝的背景を解明することにある。そのため(1)免疫機能異常を誘導する突然変異遺伝子を種々の素因遺伝子を持つマウスに導入しその病像並びにMφの機能を解析した。又(2)この突然変異遺伝子の存在下で種々の膠原病病変の発症に個別的に誘導可能な背景遺伝子の存在をつきとめた。
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