研究概要 |
自己免疫疾患の発症機序はなお多くが不明である. 我々は新生児期のマウス胸腺摘出により, 発育後発現する自己抗体産生を伴った種々の臓器特異的自己免疫疾患をモデルとして取り上げ, その発症の根底には自己反応性T細胞の分化増殖を抑制する調節性T細胞の機能異常ないし欠落のあることは提示してきた. それに基き本研究は自己免疫臓器炎殊に胃炎発症におけるY及びB細胞の直接的役割(効果作用)は何であるかを明らかにする目的で遂行された. その結果, 自己免疫性胃炎発症状態にある時には自己胃壁細胞によりT及びB細胞も活性化され, 前者は遅延型過敏症を, 後者はHCL分泌と関係した胃壁細胞内分泌小管及び小管小胞系に存在する少なくとも3種のエピトープ(この自己抗原には種特異性のあるものとそれを越えるものが存在する)を認識する自己抗体を産生することが明らかにされた. これらの知見によって臨床所見は十分説明しうると考えられる. しかしながら炎症を惹起し組織破壊を結果する過程におけるT細胞, B細胞の直接関与はまた解決されていない. 両者の認識するエピトープが共通か否かを知ることがそれを明らかにする一つの道であろう.
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