研究概要 |
昨年度の報告で, 先天的に胸腺を欠損したヌードマウスではThyー1^+細胞が存在し, これらT細胞は加令に伴ってCD_4やCD_8を表現した細胞に変ることを明らかにした. 本年度はこれら胸腺外で分化したCD_4^+あるいはCD_8^+細胞が胸腺内におけるT細胞の分化過程と同じ経路を経た細胞か否かを表面分子の表現型を指標として検索した. T細胞レセプターα,β鎖分子と常に共発現しているCD_3に対する抗体とCD_4やCD_8に対する抗体との二重染色をいた結果, ヌードマウスリンパ節や脾の細胞では20週令になると始めて成熟機能T細胞と同じ表現型をもつCD_4^+CD_3^+やCD_8^+CD_3^+細胞が検出され始めた. 一方, 胸腺内でのT細胞分化過程を個体発生学的あるいは臓器培養を用いて調べると, CD_4^-CD_8^-細胞群からCD_4^+CD_3^+やCD_8^+CD_3^+細胞群が出現するまでには5日以内であった. しかもその間に, CD_4^+CD_8^+細胞が多数出現した. ヌードマウスでは成熟型T細胞が出現するのに20週間という〓慢ともいえる期間を必要としているが, その間にCD_4^+CD_8^+細胞は検出されなかった. この事実から, CD_4^+CD_8^+細胞は胸腺内外でのT細胞分化過程の差を解明する上で重要な細胞と考えられた. そこでCD_4^+CD_8^+細胞の分化過程における位置と必然性を明らかにする目的で, CD_4^+CD_8^+細胞を胸腺細胞から分離し, ヌードマウスに移入してその動態を検索した. ヌードマウスリンパ節と脾の細胞を各種モノクローナル抗体で染色してみると, ドナー由来のCD_4^+とCD_8^+細胞が検出されCD_4^+細胞は数%であった. 以上の結果は, CD_4^+CD_8^+細胞はCD_4^+あるいはCD_8^+細胞に胸腺非依存性に分化すること, しかしCD_4^+細胞の出現は胸腺内分化過程に特異的であることが示された. 胸腺非依存性のT細胞分化を促進する目的で作製を試みたヌードILー2トランスジェニックマウスの仔マウスが得られたので来年度はその解析を行う.
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