研究概要 |
疫学としては計画通り群馬県下10大病院の中央検査室において、病巣由来菌14000株の薬剤耐性が検査され、その結果が総合的にまとめられた。種々の新薬に対する耐性菌の動向をみると、ペニシリン系ではピペラシリンの緑膿菌に対する効果が確認され、セフェム系では第3世代が腸内細菌のすべてに有効であり、アミノグリコシドではアミカシンが最もすぐれ、その他ではニューキノロンが病原菌にまんべんなく有効であることがわかった。 日和見感染菌として注目されているセラチアについて、第3世代ゼフェムへの耐性獲得の機序を知るために、in vitroでの感受性菌の耐性化、および耐性菌の耐性脱落変異株を分離しこれらを解析した。その結果セフェム耐性には中等度と高度耐性が、又誘導型と構成型があり、高度耐性にはセフェム不活化酵素による耐性発現の他、外膜透過性が変化したものがあることがわかった。後者の場合、セフェム剤に対してでなく、アミノグリコシドやニューキノロンにも同時に耐性であった。 一方ニューキノロン耐性では、ノルフロキサシンを用いた緑膿菌のin vitro耐性菌はDNA gyrase変異株、2種の透過性変異株が分離され、それぞれに対応する遺伝子としてnfxa,nfxB,nalBが同定された。nfxBにおいては54Kの外膜タンパク質が新しく出現していた。 腸球菌におけるフェロモン誘導による耐性伝達では、臨床株の約80%が種々の薬剤耐性、あるいは病原性遺伝子の伝達性を示した。 緑膿菌に特異的な転移を示すトランスポゾンTn2001の解析では、その挿入座位、Tn2001における切断と結合部位のDNA塩基配列を調べると、それぞれに特徴的な配列が見出された。
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