研究概要 |
昭和62年度は緑膿菌の薬剤耐性殊にアミノグリコシド耐性と新キノチン耐性について疫学的研究を完了した. すなわち昭和59年度より62年まで群大病院中央検査室で集められた臨床由来緑膿菌385株について23種の薬剤に対する耐性の有無を調べ, いづれの薬剤かに耐性の90株については血清型とファージ型も調べた. 血清型では,B,C,I型が多く, ファージ型ではHh8とFh8が多かった. 殊にGentamicin(GM)耐性型についてみるとファージ型別不能,血清型ではI型が多く,昭和59年分離のGM耐性9株はすべてI型であった. これらはすべて同一の非伝達性プラスミドをもち,他の株にGM耐性の形質転換が可能であった. これらの株の由来教室が数科におよんだので, 同一菌が病院内で科から科へと拡がったことが考えられた. 昭和61年度以後分離されたGM耐性菌は多剤耐性を示し,14株の内10株からは伝達性ある薬剤耐性プラスミドが分離され,それらは4種類以上の多剤耐性型を示した. 従って61年度以後においてはGM耐性菌の蔓延は耐性菌自身の蔓延だけでなく, 菌と菌との接合による薬剤耐性の伝達がこれに加わることがわかった. 以上のようにアミノグリコシドへの耐性は殆んどがプラスミドによる耐性である. これと異なり,新キノロン耐性は菌自身の変異, すなよち染色体性の耐性である. 群馬大学病院でも新キノロン使用量は急速に増加しているが, それと共にセラチアや緑膿菌の耐性化も著るしい. 緑膿菌の新キノロン耐性は薬剤の標的酵素の変異によるものの他に透過性の減少したものがふえ, それらにも数種の型があることがわかった. 透過性変異株は新キノロン耐性の変異だけでなく, アミノグリコシドやβラクタムや他の種々の薬剤にもMICの変化を伴い, 病原性もまた種々に変化していることがわかった.
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