研究概要 |
1.RepAタンパクの精製:プラスミドRts1の複製開始に必須な蛋白質RepA(分子量33K)をコードする遺伝子repAをベクタープラスミドpuc8にクローン化し、さらに強力なプロモーターtacの制御下におくことにより、RepAタンパクを分離精製することができた。 2.RepAタンパクの組成:精製RepAタンパクのアミノ酸組成を調べたところ、repA遺伝子を構成するヌクレオチド配列より推定される理論的な組成値とほぼ完全に一致した。 3.RepAタンパクとDNAとの結合能:従来のin vivoの成績(不和合性試験)より、RepAタンパクはミニRts1-DNA上のinc【I】,inc【II】 領域に結合することが推定されていた。そこで、inc【I】領域およびrepAのプロモーターを含むinc【II】 領域をそれぞれクローン化し、精製RepAタンパクとの結合をDNase【I】 フットプリント法により調べた。その結果、RepAタンパクは、inc【I】,inc【II】 領域を構成する特殊なくり返し配列(21〜24bp)部分と、repAプロモーターに隣接する上流約20bp部分、およびinc【II】のさらに上流の10bp部分に特異的に結合することが証明された。なお、inc【I】への結合はやや弱かったが、上記の他領域の間ではRepAタンパクとの結合能に明らかな差は認められなかった。以上の成績および従来の我々の知見を総合して、複製必須蛋白質RepAはinc【I】,repAプロモーター近傍に結合することによりRts1の複製をネガティブに調節する一方、inc【II】またはその近傍にある複製開始点に結合して複製開始を指令するポジティブな働きをすると考えられる。 今後の展開:RepAタンパクに種々の変異を導入し、複製開始能と不和合性に与える影響を調べる。またRepAタンパクとDNAとの結合能に与える温度の影響を調べる。
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