研究概要 |
1.宿主蛋白質生合成の抑制(shutoff)に関与するインフルエンザウイルス遺伝子の同定 (1)温度感受性(ts)変異株感染MDCK細胞内の蛋白質合成を〔【^(35)S】〕メチオニンのパルスラベルにより分析した結果、PB1,PB2,PAおよび【NS_1】遺伝子の変異株の中に許容温度34℃ではshutoffを起すが、非許容温度40℃では起さないものを見い出した。 (2)上記ts変異株について【ts^+】復帰変異株を分離し、そのshutoff能の温度感受性を調べたところ、shutoff能に関しても同時に【ts^+】に復帰していた。このことからPB1,PB2,PAおよびNS,遺伝子はshutoffに関与することが明らかになった。 2.Shutoffに関与する細胞因子の同定 (1)感染および非感染細胞よりmRNAを抽出し、コムギ胚芽抽出液翻訳系を用いて活性mRNA量を比較したところ両者に有意の差がなく、shutoffは転写レベルではなく翻訳レベルで起っていることが示された。 (2)上記のshutoff能に関してもtsの変異株では非許容温度においてウイルスの後期蛋白質合成、すなわちHAおよびM蛋白質の合成が抑制されていた。 これらのことから宿主の翻訳系がウイルス遺伝子PB1,PB2,PAおよび【NS_1】の産物により修飾を受け、その結果宿主蛋白質の生合成は抑制され、一方ウイルスの後期蛋白質の生合成は逆に促進されるという機構が示唆される。今後この様な選択的な蛋白質生合成の抑制・促進をもたらす翻訳系修飾の実体を解明して行く予定である。
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