研究概要 |
1 宿主蛋白質生合成の抑制(shutoff)に関与するインフルエンザウィルス遺伝子の同定とその機能の解析 (1)温度感受性(ts)変異株感染細胞内の蛋白質合成を分析した結果, PB1,PB2,PAおよびNS_1遺伝子の変異株の中に非許容温度40°Cではshutoffを起さないものがあり, これら遺伝子がshutoffに関与することが明らかになった. (2)上記shutoffに関するts変異株の多くは非許容温度においてウィルス後期蛋白質HAおよびMの合成が抑制されており, shutoffとウィルス後期蛋白質合成の亢進は共役関係にあることが示唆された. (3)PB2-ts変異株の解析から, PB2蛋白質はウィルスmRNA,cRNAおよびvRNA合成に直接関与するばかりでなくポリメラーゼ遺伝子PB1,PB2,PAのmRNAおよびcRNA合成の量的調節にもかかわることが示された. (4)NS_1-ts変異株の解析から, NS_1蛋白質は1次転写によるmRNA合成および初期蛋白質生合成には関与しないが, それに引き続くcRNA,vRNAおよび2次mRNA合成に関与することが示された. また, NS_1は後期遺伝子mRNAの翻訳効率の亢進に役割を果たしていることが示唆された. 2 Shutoffの機構の解析 (1)感染および非感染細胞よりmRNAを抽出し, 無細胞翻訳系に添加して宿主蛋白質の活性mRNA量を比較したところ両者に有意の差がなく, shutoffは転写後の翻訳レベルで起っていることが示された. (2)熱ショックあるいは亜匕酸ソーダ処理によりストレス蛋白質の合成を誘導すると, shutoffとは逆にウィルス蛋白質の合成が翻訳レベルで抑制された. これらのことからウィルス感染はストレス蛋白質の合成誘導とは拮抗的な翻訳系の修飾を行い, その結果shutoffとウィルス後期蛋白質合成の亢進が引き起こさることが考えられる.
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