研究概要 |
マウス補体C4とそのアイソタイプ(Slp)は、MHCクラス【III】に属する重複した相同遺伝子によって支配されている。これら遺伝子は、cis-作動性の遺伝要因によって調節されていることが古くから知られていたが、その本体については全く不明のままであった。本研究はC4,Slp遺伝子の調節機構を明らかにする目的で、種々のマウス系統からC4,Slp遺伝子を分離(構造と転写活性を解析している。 1.マウスC4,Slp遺伝子の転写調節領域の固定: FMマウス(H-【2^d】)から分離したC4,Slp遺伝子の全コード配列を決定すると共に、5′上流【2^(kb)】の構造と調節機能を比較した。H-【2^d】マウスではC4遺伝子は構成的に発現されるのに対し、Slp遺伝子はテストステロン依存性に発現される。両遺伝子は、転写開始部位から【1.8^(kb)】上流まで95%の高い相同性を示した。ただSlp遺伝子では、2個所に特徴的な配列の欠失が見られた。両遺伝子の5′上流領域を、pSVO-CATに挿入し、HepG2細胞に移入して、転写促進活性を測定したところ、両者には大きなちがいがみられた。C4遺伝子5′上流領域は強い転写促進活性を示したのに、Slp遺伝子の5′上流領域にはそのような活性は全く見られなかったのである。 2.Slpの構成的発現の分子機構: C3H,W7などのマウスでは、Slpが例外的に構成的に発現されている。その理由を調べるために、C3H,W7由来コスミドライブラリーからC4,Slp遺伝子を分離し、構造と転写促進活性を比較した。C3H,W7には5個のC4様遺伝子が存在するが、Slp遺伝子と思われていた4個の遺伝子のうち3個が、実はRecambinant geneであることがわかったのである。いずれも、5′側をC4遺伝子に由来し、3′側をSlp遺伝子に由来しており、染色体不均等交叉によって生じたものである。
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