研究概要 |
本研究の第一段階は、放射線に曝露された実験動物の肝臓内に誘導生合成される亜鉛結合低分子量蛋白質と、遺伝性重金属代謝異常症であるメンキース病の際腎臓に蓄積される銅結合低分子量蛋白質を精製し、その性質を調べ、従来より知られているメタロチオネインとの異同を明らかにすることである。次いでその量的変化を調べ、最後に放射線耐性と重金属代謝異常症の発症の機構を解明しようとするものである。 (1) 第1年度において、まず亜鉛および銅結合低分子量蛋白質の簡便にして正確な精製、定量法を確立した。すなわち、逆相・イオン交換カラムを用いる高速液体クロマトグラフにより、これら蛋白質を分離、定量することに成功した。 (2) これら蛋白質は、さらにアミノ酸配列の異なるいくつかのイソ蛋白質に分かれ、このイソ蛋白質と生理的,病理的条件の関係が注目されているが、そのイソ蛋白質を分離,定量する方法を開発し、種々の条件下で生合成されるイソ蛋白質の分布を調べることができるようになった。 (3) 自然発症ヒト・メンキース病のモデル・マウスを我々の教室で飼育・繁殖し、既に銅結合蛋白質の精製に充分な腎臓を確保することができた。近く上述の方法で精製に着手する予定である。 (4) メンキース病の銅結合蛋白質の性質を調べる上で、非常に参考になる銅置換メタロチオネインの調整に成功し、現在その性質を調べている。 (5) これら蛋白質の性質を調べるため必要なメタロチオネインのモノクロナール抗体を調整し、現在その検定を行っている。 (6) 本研究と関連して関心の持たれている肝臓細胞中での亜鉛の代謝とくに脂質代謝との関係について、肝初代培養細胞を用いた研究はほぼ終了し、現在論文執筆中である。
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