研究概要 |
本年度実施した、マウスを用いた実験の内容及び知見は以下のとおりである。1.微量元素過剰食での飼育条件の検討:Zn,Srの各過剰食で雄を2週間飼育の後、体内分布の定量を行なった。Sr過剰では骨中Srの著明な増加を認めたのに対し、Zn過剰では通常の10倍のZn摂取であったにもかかわらず臓器中Znの変化は軽微であった。 2.微量元素による生体影響の生理・生化・行動学的指標の検討:(1)致死量に満たないSeを一回投与した後に、体温低下酸素消費量の減少、摂食行動の誘発(いずれも一過性)が起きることを観察した。(2)Hg,Cr,Mn,Al,Mg,Caの一回投与によっても、Se同様の一過性の体温低下を生じた。Cu,Pb,Sn,Feについては明確な体温変化を認めなかった。Hgについては摂食行動の誘発をも確認したが、他の元素については未検討である。(3)Cr一回投与後、赤血球中グルタチオンレダクターゼ活性の低下を認めた。 3.環境条件を変えて飼育するたの基礎的条件の検討:(1)温度条件の変化;1.間歇的に寒冷ばくろ(10℃)を行ない。食塩水と蒸溜水とを選択摂取させたころ、寒冷ばくろ期に食塩水の摂取が増加した。2.Se一回投与時の生体影響(2.(1)に記した)が環境温によって修飾されること、及びSe毒性(死亡率、体重変化によって評価)が環境温によって著しく変わることを認めた。(2)個体群飼育における生体影響指標として重要な繁殖力に対しSe及び有機Hgの及ぼす影響を、個別飼育条件下で検討した。特に妊娠前のばくろに注目した。すなわち、有機Hgは一回投与の後、2週間連続でキレート剤を与え、その後交配して妊娠させ、繁殖能を検討し、Seは飲水に添加して10〜20日間与えた後、交配、妊娠させ、出産直前におけるSeの母体・胎盤・胎仔への分布を定量した。(3)低酸素条件での飼育装置(酸素消費量測定装置も兼ねる)を製作し、短期の試験を実施した。
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