研究概要 |
本年度は補助金交付の初年度であり、研究実施計画の初年度部分について研究を行い、以下の知見ならびに成果を得た。なお初年度補助金により購入した設備備品である原子吸光光度計は、実験の主要な部分である細胞内蓄積カルシウムおよびカリウムの測定に用いた。 (1)実験系の確立:Mandelらの方法に従い、ニュージーランドホワイト種の雄性家兎の腎臓をコラゲナーゼを含む緩衡液で灌流し、腎皮質の尿細管細胞を分離し、家兎腎尿細管細胞浮遊液を調製し、得られた細胞が満足のいく生理的機能を有するかどうかを検討した。その結果、ナイスタチン添加による最大細胞呼吸率32.0±1.5nmol【O_2】・【min^(-1)】・mg【protein^(-1)】ADPおよびジキトニン添加による最大ミトコンドリア呼吸率35.6±1.6nmol【O_2】・【min^(-1)】・mg【protein^(-1)】,FCCP添加呼吸鎖最大酸素消費率113.8±4.6nmol【O_2】・【min^(-1)】・mg【protein^(-1)】細胞内カリウム300±7nmol・mg【protein^(-1)】,細胞内カルシウム16.6±0.5nmol・mg【protein^(-1)】,等の値を得、また組織学的な検索も行い、今後の実験に供するに充分な系であると結論した。(2)低酸素状態におけるカルシウム蓄積および尿細管細胞障害の測定:10,20,30,40分間の低酸素状態を負荷し、細胞内カルシウム量およびLDH遊離量を測定し、完全なanoxiaではカルシウムの蓄積がないこと、しかしチトクローム酸化酵素の10-40%の酸化率を示す低酸素状態においては40.6±6.8nmol・mg【protein^(-1)】のカルシウム蓄積を認めることも明らかにした。またLDHの遊離は時間とともに増加し40分間の低酸素状態では約60%のLDHが細胞外に遊離した。さらにATP,ADP,AMP,ハイポキサンチンは興味深い変化を示したので、その結果の詳細を第57回日本衛生学会総会で報告し、データを衛生学雑誌に収録する(裏面参照)。(3)他の化学物質での複合影響に関しては、現在結果を集計し検討中である。
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