研究概要 |
1.アクリルアミドと関連誘導体のせき髄神経節(DRG)への毒性を調べて以下の結果を得た. (1)DRGに神経成長因子を添加すると神経突起伸展が認められ, この伸展に対する化合物の毒性はED_<50>で比較すると, 7化合物中アクリルアミドとNーハイドロキシメチルアクリルアミドが強かった. (2)ED_<50>とラットのLD_<50>との間に有意の相関が認められたことから, 本培養系は毒性スクリーニングに有用と思われた. (3)ATPとADPはアクリルアミドのDRGへの毒性を軽減したが, ピルビン酸は無効であった. (4)アクリルアミドは解糖系酵素を阻害することから, 培養細胞のATP産生を抑制すると考えられ, その結果DRGからの突起伸展が低下すると考えられた.一方, ATPやADPは細胞にとりこまれ, ADPはATPに変換された後にアクリルアミドによって減少したATPを補うので, 突起伸展が持続すると考えられた. 2.ニューロブラストーマとシュワノーマへの鉛, 水銀, タリウムの毒性をしらべた. 細胞毒性はED_<50>で比較すると, いずれの細胞でも鉛が最も強かった. 両細胞は金属類の毒性実験にも有用と思われた. 3.アクリルアミドは小脳星状膠細胞の増殖を著明に抑制した. 無処置及びインターロイキン1処置後のチミジンのDNAへのとりこみが著明に抑制され, 細胞分裂阻害剤処置後はDNAへのとりこみに変化なく, また蛋白量も減少が見られなかったことより, アクリルアミドの効果は主に星状膠細胞の細胞分裂抑制にあると示唆された. この培養細胞系も, 化学物質の神経障害機序および毒性予測の研究に有用と判断された.
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