研究概要 |
本研究は, 間接X線撮影法を一次スクリーニングに用いている胃集検において, 受診者集団に対する低線量X線被曝が悪性腫瘍, 特に白血病の発生リスクにいかなる関連をもつか疫学的手法を用いて明らかにすることである.昭和61年度及び62年度の研究実績の概要は以下の通りである. 1 症例・対象研究による方法 昭和53年から58年まで宮城県内でlymphatic leukenia(ICD No.204), myeloid leukemia(205), およびその他のleukemia(206-208)の診断で宮城県新生物レジストリーに登録された40〜65歳の白血病患者のうち集検受診歴の逆追跡可能な地域でかつ症例にマッチさせた対照群を選ぶための資料の整っている地域の白血病患者48例を症例とした.対照は, 症例に性, 年齢および住所をマッチさせた非白血病の者を症例1に対し2倍の96例をランダムに選んだ. 検診受診歴の逆追跡から胃集検をリスク要因とした場合の白血病発生の相対危険度(Relative Risk,RR)をOdd's比で算出した. 結果は, 全白血病(48名)ではRR=1.0, myeloid leukemia(28名)ではRR=0.82(n.s.), また, 潜伏期を仮に5年とした場合の同様の検討では, 前者のRR=1.0, 後者のRR=0.87(n.s.)であった. 以上の成績から「胃集検は白血病発生のリスク要因になっているとはいえない」と結論づけられよう. しかし, 本研究の過程で, 県内では生した白血病患者の原爆被曝歴の有無の検討, 急性骨髄性白血病での検討の必要性が討論されたので, 上記の成績は中間的報告という型にとどめ, さらに上記問題点を解決するための各種記録との照合作業が行われている. また, 胃集検の受診回数との関連についても検討中である. 2.コホート研究による方法 悪性腫瘍の罹患状況と胃集検受診状況との照合作業はなお継続中である.
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