研究概要 |
1,近年, わが国では, 脳卒中予防対策を積極的に行ってきた地域において, 脳卒中発症率の著明な減少が認められた. しかし, 脳梗塞については, 壮年期においては発症率の減少が認められたものの 高齢者については発症率の減少が明らかでなく, 脳梗塞の発症要因の検討が重要な課題となっている. そこで, 脳梗塞の発症要因として近年注目されている心房細動(Af)を中心に, 脳梗塞発症要因について疫学的検討を行った. 秋田農村における検討結果から以下の結果が得られた. (1)心房細動を有するものの割合は,昭和40年代に比し, 昭和50年代では増加している. (2)昭和47〜50年の検診成績をベースラインデータとして, 30才以上の男女計3031人について, 脳梗塞の危検因子を多重ロジスティックモデルにより分析した所, Afは, 心電図STーT異常, 眼底高血圧性変化, 加令とともに, 有意な脳梗塞の危検因子として認められた. (3)昭和50年以降62年迄の検診でAfの基礎疾患を検討した結果, 30〜59才, 60〜79才のいずれの年令層においても, 高血圧が最も高い率を占め, 弁膜症, 心筋梗塞, バセドウ病の割合は少なかった. (4)弁膜症等を有さないAfについて, Afと脳梗塞発症との関連を検討した結果, 高血圧を伴うAfの方が, 高血圧の先行を伴わないAfに比し脳梗塞を発症する率が高かった. 高血圧の先行を伴うAfが脳梗塞を発症した例では, 脳梗塞発症年令は70才前後の高令が多かった. 2,虚血性心疾患の発症率の推移を, 大都市企業勤務者, 都市近郊住民 秋田農村について検討した. その結果, 秋田農村においては発生率の上昇傾向は認められず, 大都市企業勤務者においては虚血性疾患の発生率は, 近年増加傾向にある. 都市近郊住民においても発生率は, 若干増加傾向にある. そこで, 都市部での虚血性心疾患の予防対策が重要と考えられる.
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