研究概要 |
低周波空気振動の睡眠への影響を実験的に明らかにする目的で、健常男子大学生を低周波音実験室に寝かせ、各種の音圧レベルで10Hz,20Hz,40Hz,63Hzの低周波空気振動に20分間隔で1回につき30秒間暴露した際の睡眠への影響をポリソムノグラムを記録することにより検討した。本研究では対照夜を設定するために実験第1夜と第2夜には低周波空気振動を暴露せずポリソムノグラムを記録した。実験第1夜のSW(覚醒)の出現率は実験第2夜より高かった。また、第1夜では、第2夜よりも睡眠段階【S_(3+4)】,【S_4】およびSREMの出現率が低かった。これらの結果より、実験第1夜における各被験者の睡眠が十分でなかったことが推察された。そこで、本研究では実験第2夜を低周波空気振動の睡眠への影響を検討するための対照夜とした。低周波空気振動の暴露夜において、暴露音は各睡眠段階の出現率とほぼ一致した割合で各睡眠段階に挿入されていた。この結果から、被験者を20分間隔で低周波空気振動に暴露した今回の実験条件は適切であることが確認された。暴露中30秒間を含めた1分間の低周波空気振動に対する反応の陽性率は、ノンレム睡眠においては【S_1】で最も高く、睡眠段階が深くなるに従い低下していた。レム睡眠における反応の陽性率は【S_2】とほぼ同程度であった。低周波空気振動の暴露中30秒間を含めた1分間の低周波空気振動に対する反応の陽性率が50%以上となる音圧レベルを、その周波数の低周波空気振動による睡眠への影響の発現いき値と考えた場合、10および20Hzに関しては評価することができなかった。40Hzではいき値が95dB,63Hzでのいき値は90dBと設定することができた。低周波空気振動を暴露しても、睡眠パターンの指標となる睡眠率,睡眠段階移行回数,睡眠段階別出現率には特記すべき変化は認められず、低周波空気振動の睡眠への影響は小さいことが示唆された。
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