研究概要 |
先天異常,悪性腫瘍,加令,免疫異常の相関を解明してゆくことは、基礎医学ならびに臨床医学の重要な課題の一つといえる。染色体異常は、それ自体量的に把握することのできる遺伝物質の変化であり、発がん機構とも関連が深い。本年はともに悪性腫瘍のハイリスク疾患である常染色体優性遺伝病の一つである結節性硬化症ならびに常染色体劣性遺伝病の一つであるファンコニー貧血の患児より得たリンパ球ならびに皮膚センイ芽細胞を培養し、マイトマイシンC(MMC)誘発の姉妹染色分体交換(SCE),r線による誘発SCE,MNNG誘発SCEならびに染色体異常の検討を行なった。対象数はファンコニー貧血(2例)をのぞき、正常対照を含め各4例ずつである。まず、リンパ球における検討では、r線照射,MMC誘発SCEはとくに正常対照との間に有意差を認めなかった。染色体構造異常は400rad照射で高い傾向が認められた。培養皮膚センイ芽細胞における誘発SCEの検討では、結節性硬化症群では正常対照との間に有意差を認められなかったが、ファンコニー貧血の2例中1例では正常対照に比して高い傾向が認められた。例数が少ないので、スペキュレーションの域を出ないが、ファンコニー貧血には同一疾患単位群内にsubgroupのある可能性があり、それががんに対するハイリスクの程度差を形成しているのかも知れない。今後、さらに検討を加えてゆく予定である。
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