本年度(最終年度)は、肥満外来を受診し、空腹時75gOGTT(oral glucose tolerance test)を施行することができた男子57名(21-75才)、女子30名(41-80才)計87名を対象として、各種肥満指標(BROCA指数、BMI(body mass index)、%FAT値(上腕背側皮脂厚と肩甲下皮脂厚からNagamineの式により算出) 、WAIST/HIP RAT101(WH1)、WAIST/HIP RAT102(WH2)、体重、腹部皮脂厚(FABD)、えき下皮脂厚(FILIA)および大腿部皮脂厚(FTH1)と安静時血清中INSULIN LEVEL(1RI1)、75G-OGTTに対するINSULINの反応性との関連性を検討した。ただし、同対象者を過去2-3ケ月の血糖の動きを反映するとされているHbA1Cのレベルにより高血糖群(HBGG)と正常血糖群(NBGG)に分けると、HBGGは男子15、女子8名、NBGGは男子29、女子10名であった(ただし、残りの対象者はHBA1Cのデータがない)。 結果、安静時血清中インスリンレベル(IRI1)は、以上の各種肥満指標との間に有意な単相関関係な全く認められなかった。一方、75g glucose負荷後30、60、120、180分の血清インスリンレベルとIRI1との差をそれぞれDIRI30、DIRI60、DIRI120、DIRI180として、同様の単相関関係を見たのが表1である。 表に明かな様に、肥満指標との相関関係はDIRI30が最も大きく、中でもこれと%FAT値(即ち、ファット・マス)あるいは部位を問わず各種皮脂厚との関連性が強い傾向が示唆された。 ここで、DIRI30を従属変数として、性、年齢および以下の各肥満指標をそれぞれ1個づつ加えた時の説明率と、性及び年齢のみの場合の説明率との差を、一般線型モデルによる共分散分析によって調べてみたのが、表2である。 表2の結果は、上記の結果を指示しており、%FAT値、各部皮脂厚の高い説明率があげられる。今までの報告では、腹部の脂肪は生理的にACTIVEであるが、同部の脂肪は生理学的に不活性であるとされている。 いづれにしても膵臓ホルモンであり、糖・脂質代謝に主要な役割を有するインスリンと肥満との関連性において、体脂肪量に比較して糖負荷に対する分泌量が増加してくるという傾向が重要であり、前2年間に行った安静時の血清インスリンレベルと各種肥満指標との関連性についての知見も、こうした成績からもう一度見直すことが必要となっている。また、糖尿病の病態時における肥満とインスリンのレベルおよびその反応についてもさらに検討中である。
|