研究概要 |
昭和61年度の研究は、本研究の序となる基礎的な段階のものに終始した。 1.沖縄県における心身症患者の実態把握を目的として、琉球大学医学部附属病院および沖縄セントラル病院の内科および心療科において心身症患者の診療にあたり、症例の収集と心身医学的検討を開始し、症例を通してプライマリ・ケアの段階でユタなど沖縄の社会文化的要因がどの程度にどのような状態で症状形成に関わっているかを、症例学的研究し、その一部を第27回日本心身医学会総会で「Eating disorderの表現型をとった患者の心性ー沖縄の社会文化的環境と精神衛生ー」のテーマで学会発表した。 2.心身症および神経症患者の実態把握の一方法として、minor tranquilizerの使用状況に注目し、それの調査にあたる基礎的な打合せを沖縄県との比較対象として広島県内の病院と行い、チャートの作成を行った。 3.ユタなどの伝統的な社会慣習が比較的よく保たれている沖縄県与那城村において、住民の疾病に対する意識調査を施行し、プライマリ・ケアの様態について検討した。対象61家族のうち、外傷や急性発症では医療機関へかかっているが、家族に病気やけがや不幸がつづく時には28家族(45.9%)はユタに相談,4家族はユタ以外の神社や寺でのお祓,1家族はユタと病院の双方にかかるという実態が明らかとなった。ユタへの相談の経験を有する者は住民の70.5%にみられた。疾病に対するユタの効果の評価意識は、47.5%の人が認知していて、これをユタへの相談経験者でみると67.4%が効果の評価をしていた。頭痛,不明の発熱,流産,月経不順,事故の順に効果を評価している。結果は第26回日本心身医学会九州地方会で「沖縄の社会文化的環境と住民のプライマリ・ケアの様態に関する意識調査」のテーマで発表した。 4.上記に関する文献や資料収集ならびに研究方略についての検討打合せを東京大学,北海道大学などで行った。
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