研究概要 |
昭和62年度の研究は,昨年度の研究の維続を主とし,これに痴呆老人に対する社会文化的要因を踏まえた心身医学的な治療的アプローチの研究を新たに加えた. 1.沖縄県における心身症患者の実態把握を目的として,琉球大学医学部附属病院および沖縄セントラル病院の内科および心療科において心身症患者の診療にあたり,症例の収集と心身医学的検討を行い,ユタなどのカミグトウ(神事)をはじめ沖縄の社会文化的要因が,心臓神経症,過吸症状群,離人症状などの症状形成にどのように関わっているかを症例学的に研究し,その心身医学的治療方略を検討し,その一部を第27回日本心身医学会九州地方会において,「沖縄の社会文化的背景と精神衛生ー身体疾患を希求するカミダーリ神経症ー」のテーマで学会発表した. 2.心身症および神経症患者の実態把握の一方法として,minor tranquilizerの使用状況を,昨年に引続き調査研究した. 3.沖縄にあっても一段と特色ある社会文化的環境をもつ宮古諸島出身の,痴呆老人女子入院患者6名に対し,宮古方言で語り,宮古民謡を歌い,宮古の雰囲気での患者接近を試み,臨床像の改善への社会文化的要因の影響を検討した. 結果は,重症病呆例では長谷川式DRスケールは変化しなかったが,中・軽症例では2.5〜5.0の点数増加がみられた. 同時に行ったADLや場面行動評定票の変化では,表情,話の3解度,意志の表示,リハビリへの反応などに点数増加がみられ,下地式評定票で5〜11点の改善をみた. また同時に援用したSDS変法テスト結果からは,減点化がみられ,情緒面での改善がえられているものと考えられた. この研究は,第29回日本心身医学会総会で発表予定である. 4.文献資料収集や打合せを行った.
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