研究概要 |
慢性肝性脳症モデルとしてのエック瘻犬について検討した。 1.血液アンモニアはエック瘻犬117.8±34.0(mean±SD,μg/dl,各4頭)、正常犬26.7±5.5、髄液アンモニアはエック瘻犬89.3±7.8、正常犬34.7±6.0であり、それぞれエック瘻犬で有意の増加を示し、このモデルは肝性脳症モデルとして適していた。 2.脳CCK-8IRの部位別差異:エック瘻犬(正常犬)のCCK-8IR(mean±SEM,Pmol/gwwt)は、前頭葉183.3±17.3(345.0±53.4)、側頭葉172.9±26.4(281.0±24.5)、頭頂葉100.4±26.4(244.7±38.1)、後頭葉74.3±13.4(192.0±37.7)、視床34.6±5.8(130.5±28.4)、中脳17.0±3.2(43.5±4.1)、延髄9.6±1.4(14.3±1.8)であった。すなわち脳CCK-8IRは健常犬では大脳皮質で高濃度であり、エック瘻犬では大脳皮質と中脳、延髄にて正常犬の1/2〜1/3に有意に減少した。 3.脳遊離アミノ酸:Tyr,Pheの芳香族アミノ酸はエック瘻犬では正常犬の2〜3倍に増加し、ことにPheの増加が著明であった。 4.血液と髄液のCCK-8IRは、エック瘻犬と正常犬で差がなかった。 5.脳CCK-8IRと脳遊離アミノ酸との相関:脳各部別ではTyr、PheとCCK-8IRとの相関は、負の傾向を示すも、明確でなかった。 6.脳CCK-8IRは血液アンモニアおよび髄液アンモニアと負の相関を示した。 7.CCKの脳内分布の組織化学的検討:螢光抗体間接法を試みており、染色結果は非特異染色はみられるものの、従来の報告(Kubota,Y.et al:Neuroscience 9;587,1983)とほぼ同様の染色性を得ている。 8.ヒト(剖検例)の脳については、材料を集めている段階であり、来年度測定の予定である。
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