研究概要 |
本年度に得られた成績の結論から述べると、細胞内増殖菌であるレジオネラによる肺炎に対するリポソーム封入抗生剤による治療(リポ治療)では、試験管内実験では常にその有用性が立証できた。また、動物実験(モルモット)では生存率の延長が常に得られたが、統計学的に有意差を得ることができなかった。 その理由として、モルモットの連続静注(1日2回,7日間)治療が困難であることがあげられ、モルモット以外で連続静注可能な動物(マウス,ラット,家兎およびマーモセット)について検討し、一定の死亡率を示すレジオネラ肺炎の作成にも成功したが、各種の治療法の優劣を比較できる程の鋭敏な実験系とはなり得なかった。そこで、マウスが最も良好な感受性を示す細胞内増殖菌(Lysteria monocytogenes)を用いた敗血症モデルによる実験系でABPC,Minocyclinの治療を行った。現時点ではMinoによるリポ治療群が有意に生存率の上昇をもたらし、リポソーム封入抗生剤療法の有用性が得られている。以下本年度の実施計画に対する実際の成果について報告する。(1)リポソームと各種抗生物質の封入率と安定性(斎藤 厚):β-ラクタム系抗生物質,アミノ配糖体,ミノサイクリンについて検討し封入率は30%〜40%リポソーム内外の濃度が一定であれば長期間安定であった。(2)モルモットにおけるリポソーム封入抗生剤の効果(山口惠三,重野芳輝):レジオネラ肺炎においてセフタジダイム(CAZ)80mg/kg/day及び40mg/kg/dayの治療群でリポ治療群が最も生存率が高い結果であったが統計学的有意差はなかった。(3)リポソーム封入抗生剤の動物臓器内濃度測定(山口惠三,重野芳輝,河野 茂):レジオネラ肺炎モルモットおけるCAZの心腔内1回投与後(1/2,1,2,4,6時間)の臓器内(血,肺,肝,腎)濃度はいずれもリポソーム封入CAZの濃度が高い結果が得られた。
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