研究概要 |
本年度の成果から述べると, (1)抗生剤(CAZ)封入リポソームによる実験的レジオネラ肺炎(モルモット)の治療はかなりの有効性をあげることができた. モルモットに代るマウスではレジオネラに感受性がないことから, やはり細胞内増殖菌にあるリステリアを用いて, ABPCおよびミノサイクリンによる治療を行ない, これらの単独治療よりもすぐれた治療効果をあげることができた. 以下, 本年度の実施計画に対する実際の成果について報告する. (1)抗生剤封入リポソームによる治療では, 腹腔内投与では僅かの延命効果がみられたが, Ceffazidime(CAZ)単独治療群との間に有意差は得られなかった. 心腔内投与では, かなりの延命効果が得られたが, これも有意差は得られなかった. この原因としては, 心腔内投与による心タンポナーデ死亡例がみられたためであり, リポソーム治療そのものに有用性がないという成績とは考えられず, 実験肺炎を腹腔内感染として, 再度検討したところ, CAZ単独治療での生存率20%に対してCAZ封入リポソームでは100%の生存率が得られ, 有意性が認められた. 一方, リステリア感染症におけるリポソーム療法はアンピシリン(ABPC)単独治療で70%の生存率, ABPC封入リポソーム治療群100%の生存率と, リポソーム群がすぐれ, ミノマイシン(MINO)による検討でも, 前者の生存率20%に対して, リポソーム群の生存率80%と有意差をもって, リポソーム治療群がすぐれた成績を示した. 真菌感染症(特にカンジダ敗血症)によるリポソーム封入アンホテリシンBの治療では, 本剤の副作用が軽減され, アンホテリシンBの使用量が単独の5〜10倍量が用いられるという基礎データが得られたが, 治療効果に関しては, 有用性を裏付ける結果は今の所, 得られていない. 今后の検討が必要である.
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