研究概要 |
慢性アルコール(AIc)摂取による肝alcohol dehydrogenase(ADH)活性の変動に関しては, 未だ統一的な見解は得られていない. そこで各種Alc投与条件(投与量, 急性・慢性, 慢性下の急性負荷, 投与期間)での, マウス肝Low Km ADH(L-ADH)及びHigh Km ADH(H-ADH)isozymeの活性調節機構(酵素蛋白量や酵素のKineticsの変化)を検討し, 更にAIc代謝速度との関連を考察した. <方法>マウス(ddy系雄)にAIcを急性投与(1g, 3g又は5g/kgB.W.i.p.)慢性投与(4%又は6%AIc濃度の液体飼料飼育)又は慢性投与下の急性負荷(4%慢性群の一部に1g又は4.5g/kg BW.i.p.を急性負荷)して検討した. L-ADHは15mMAlcを, H-ADHは6.5mM4-methylpyrazohe存在下で7mM Hexenolを基質として活性を測定した. 両ADHの酵素蛋白量は各々の特異抗体を用いたELISA法で測定した. AIc消失速度は血中AIc濃度の経事変化から算出した. <結果及び考察>4%AIc慢性投与群は21週間以上の飼育が可能で, 10週間で脂肪肝となった. 6%慢性投与群では投与開始後1週間までに半数の固体が死亡し長期飼育が不可能であった為に, 以下の慢性投与の結果は全て4%飼育のものである. L-ADH:活性変化は酵素蛋白量の増減と一致し, その活性調節は酵素蛋白量の増減によることが示唆された. H-ADH:急性少量負荷(1g/kg)ではL-ADHと同様酵素蛋白量の増減による活性調節が示唆された. 急性多量負荷(5g/kg)では酵素蛋白量の減少に反し活性増大となり, 酵素の活性化による活性調節が示唆された. 慢性投与下の急性負荷では酵素の不活性化が生じるが, 酵素蛋白量の増加による活性調節で活性低下を阻止することが示唆された. 各ADHのAIc代謝への寄与:急性多量投与下ではL-ADHのみが活性低下するのでAlc濃度が高まるとH-ADHの寄与が増大することがまた, 慢性投与下で生じたAIc代謝の亢進はL-ADHの酵素蛋白量の増加を伴った活性増大によることが示唆された.
|