研究概要 |
2年間に亘る研究成果を箇条書きにすると以下の様にまとめられる. 1.新しい抗菌剤のLegionella感染症に対する有用性;新しく開発されたβ-lactam剤はImipenemを含め, 本症治療には有用性はないとの成績を得たが, ニューキノロン剤ではオフロキサシン, シプロフロキサシンをはじめとして, 本症に対してエリスロマイシンより優れた効果が期待され得る動物実験成績を得た. 臨床例の報告は世界ではまだなされていない. 2.薬物運搬体としてのリポソームの有用性;リポソームが目的とする食細胞内へ取り込まれるが否かの検討では, 極めて短時間内にphagocytosisされることが証明された. リポソームへのβ-lactam剤の封入率は33〜38%程度にまで上昇させることができ, in vitroではヒト単球内で増殖するレジオネラ菌を殺菌する現象が得られた. β-lactam剤の一つであるセフタジダイム(CAZ)を封入して実験的肺炎モルモットにおける臓器移行性を検討したところ, アミノペクチンで, coatingしたリポソームは肺への移行がすぐれ, 特に肺炎において充分な薬剤濃度が得られることが確められた. 3.リポソーム封入抗生剤治療の問題点実験遂行中における基礎的検討から, 多くの問題点が明らかとなった. 【○1】β-lactam剤の封入率の低いこととリポソーム外への漏出;封入率は努力して38%程度まで上昇せしめ, リポソーム外への漏出は外液を内液を同一とすることで対処した. このため感染治療実験において総投与量に占めるリポソーム封入抗生剤の濃度がやや低めとなり, 効果の差を得るのに苦労した. 【○2】リポソームは静注法でないと効果が低いこと:感受性のある動物を検討したが, やはりモルモットが最も感受性があった. 心腔内投与を試みCAZ封入リポソームの優れた治療効果を得ることができた. その他, マウスのリステリア感受性にも応用し, 優れた治療効果を得ることができた.
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