研究概要 |
1. ミトコンドリア(Mit.)脳筋症.(1)電子伝達系酵素活性:Mit.脳筋症患者の生検筋および培養皮膚線維芽細胞からMit.を抽出し、複合体【I】,【II】,【III】,【IV】の酵素活性を測定した。1例のMit.脳筋症に複合体【IV】の低下,2例に複合体【III】の低下を証明した。(2)抗体の作製.牛心筋からMit.を抽出し、Fowler法にて複合体【IV】および【II】を精製,家兎に免疫して力価の高い抗血清を作製した。(3)生検筋の免疫組織化学ではアルコール性ミオグロビン尿症の1例に複合体【IV】の蛋白低下を認めた。 2. Mit.脳筋症の剖検例の免疫組織化学.剖検例のパラフィン標本を用い、免疫組織化学的に酵素欠損例を検索した。Mit.脳筋症4例中1例の骨格筋,Leigh脳症5例中1例の肝に複合体【IV】の欠損を証明した。メンケス症の小脳では正常であった。 3. Mit.ミオパチーの免疫電顕.(1)患者生検筋をグルタール固定後、-20℃にてメタクリレート中に包埋,紫合線重合した。(2)超薄切片を作成し、Mit.酵素の抗体で反応させた。次いでプロテインA・ゴールド(PAG)を反応させ、電顕観察した。(3)正常Mit.では内膜およびクリステ膜に沿って複合体【I】,【III】,【IV】の局在を証明できた。(4)結晶状封入体を有する異常Mit.では結晶中には電子伝達系酵素蛋白は存在せず、それを囲んでいるクリステ膜にPAG沈着を認めた。渦巻状Mit.は増殖したクリステに存在することをはじめて明らかにした。 4. Mit.脳筋症モデル動物.メンケス病は銅イオンの吸収障害で、脳のMit.中の複合体【IV】の活性低下があり、Motledマウスはそのモデルとして知られている。この動物の大脳,小脳では著明に複合体【IV】のみが低下していた。ブロッティングでは複合体【IV】のサブユニット蛋白は存在していたが、量は減少していた。免疫電顕では複合体【I】,【III】は対照と差がなく、複合体【IV】のみ著明に減少していた。
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