心房性ナトリウム利尿ホルモンの高血圧における病態生理的役割に関する臨床的研究

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61480204
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 石井 當男 東大, 医学部, 助教授 (90010363)
• 研究分担者: 木村 健二郎 東京大学, 医学部, 助手 (00161555) ; 平田 泰信 東京大学, 医学部, 助手 (70167609) ; 後藤 淳郎 東京大学, 医学部, 助手 (00150277) ; 松岡 博昭 東京大学, 医学部, 助手 (20111544)
• キーワード: α-hANP / 血圧、腎機能 / 血漿レニン活性 / 血漿アルドステロン濃度 / 血漿コルチゾール濃度 / アルギニン・バゾプレツシン / 循環動態

研究概要

〔研究1〕健常男子11例に合成α-human atrial natriuretic polypeptide(α-hANP)を0.025、0.05、0.1μg/kg/minの速度で各20分間静注し、血圧、腎機能、内分泌機能に及ぼす影響を検討した。α-hANPにより血圧は用量依存的に下降し、静注中止40分後に対照期の値に復した。尿量および尿中Na排泄速度には有意な変化は認められなかった。糸球体瀘過量は変化しなかったが、腎血流量は減少し、腎血管抵抗は上昇した。血漿レニン活性は増加したが血漿アルドステロン、コルチゾール濃度は減少し、静注中止後アルギニン・バゾプレフシン濃度は急増した。従って、α-hANPはヒトにおいても降圧作用を発揮し、体液量調節に関与する諸臓器に作用し、主要は循環調節系の一つを形成すると思われる。
〔研究2〕正常血圧者(NT)8例、本態性高血圧症患者(EH)11例にα-hANPを0.025μg/kg/minの速度で40分間靜注し、循環動態ならびに腎機能に及ぼす影響を比較した。血圧は上腕動脈圧を直接的に記録し、心拍出量(CO)はキュベット法により測定した。α-hANPにより平均血圧は両群で共に5%(p<0.05)下降した。COに有意な変化はなく、末消血管抵抗(TPR)は両群で10%(p<0.01)低下した。尿中Na排泄速度および糸球体瀘過量(GFR)はNT群で変化しなかったが、EH群ではそれぞれ2.80%(p<0.01)および19%(p<0.01)増加した。ヘマトクリフトは両群で4%(p<0.01)増加した。以上の成績は、α-hANPの降圧効果は末梢血管抵抗の減少によること、Na利尿反応は高血圧患者で亢進していることを示唆する。Na利尿反応にはGFRの増加が重要な要因であり、このGFRの増加は、ヘマトクリフト上昇により示唆される血管壁透過性の亢進と高血圧との相加効果に基づくと思われる。

研究成果

• [文献書誌] Uehara,Y.: Hypertension. 9. (1987)
• [文献書誌] Matsuoka,H.: American Journal of Physiology. 251. (1987)
• [文献書誌] 石井當男: 治療学. 16. 257-259 (1986)
• [文献書誌] 石井當男: 日本内科学会雑誌. 75. 1380-1384 (1986)
• [文献書誌] Hirata,Y.: American Heart Journal. (1987)
• [文献書誌] Hirata,Y.: Japanese Heart Journal. 28. (1987)
• [文献書誌] Ishii,M.: "Hemodynamic,renal and endocrine responses to α-human atrial natriuretic polypeptide in normotensive persons and patients with essential hypertension.In:Proceedings of the 1st World Congress of Biologically Active Atrial Peptides,edited by Laragh,J." Raven Press,New York, (1987)
• [文献書誌] 石井當男: "新内科学大系・年刊版'87 心房性ナトリウム利尿ホルモンの臨床" 中山書店,東京, (1987)