研究概要 |
最近の動脈硬化研究も分子生物学的なレベルまでに発展し、多くの興味ある成積が報告されて来ている。我々は従来より動脈硬化発生,進展の鍵現象として内皮細胞障害(endotheliopathy.Numano,F.,Jap.Cir.J.,44:55,1980)による血管傷害に注目し研究を進めて来た。即ち傷害因子としての各種物質の役割や、血液分の役割,血管壁に於る傷害の病態や反応,修復機転を病理組織学的,酵素組織学的,生化学的に追求を続けている。61年度は血液側の役割に的をしぼり、特にMacrophage(Mφ)と血小板(P1)に焦点をあわせた。60年にSeattle Washington大学との協同研究にて大公細胞(Mφ)を認識しうる抗体(HAM56,RAM11)及び平滑筋(SM)を認識しうる抗体(HHF35)の作製に成功したが、この抗体を用いてヒト大動脈,冠動脈硬化を中心としてMφとSMの硬化巣進展に伴う役割を追求した。その結果泡沫細胞形成,壊死巣出現にはMφの役割がかなり重要であること、線維形成にはSMの役割が大であることが確認出来た。又、Coronary bypass術に使用される静脈に於る硬化病変はSM主体であることも観察報告した。一方冠動脈硬化に於る血小板の役割を追求すべく、家兎を用い生成したTromboxane【A_2】(【TXA_2】を動注して冠動脈を病理組織学的に検索、内膜より中膜にかけての浮腫変化の出現を確認した。同時に血中【TXB_2】,6-leto【PGF_(1α)】,Cyclic AMP,Cyclic GMPの変動を測定した結果、防禦反応を考えさせられる変動を確認した。更に培養平滑筋,培養内皮細胞を用いて血小板より放出される種々の物質Serptonin,Histamine,【TXA_2】,PDGFの傷害程度を培養液中に出てくるLDH,ADPを測定することより推測しているかPDGFを除くこれらの物質に傷害作用のあることを確かめること共にCyclic AMPを上昇させる手段がかかる血管傷害を予防しうる働きのあることを確認し動脈硬化予防,治療に関する手掛りをつかんだと考えている。
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