研究概要 |
動脈硬化の発症と進展の機序を解明し治療と予防に役立つ知見を得る目的で以下の実験を行なった. 1.血管平滑筋増殖機構-PDGFはSwiss3T3細胞の膜受容体に結合し, イノシトールリン脂質の代謝回転を促進し, DGとZP_3を産生しCキナーゼとCa^<+1>動員を活性化させ, 非依存的にc-myc遺伝子のmRNAを誘導し, 細胞周期をG_c期からG_1期へと移行させる. この時期にインスリンが作用するとS期に移行しDNA合成が促進される. ウサギ培養平滑筋でも同様のことが観察された. さらにCキナーゼを活性化するTPAやPDBuはDNA合成を促進させ, Cキナーゼを活性化しないものはDNA合成を亢進しないことから, 細胞増殖にCキナーゼが関与することが示された. 2.血小板と血管の相互作用-血小板に貯蔵されているセロトニン(5HT)は非5HT_2受容体を介してウサギ冠動脈条件を収縮させた. 冠動脈は5HTに対して感受性が高いが, ヒスタミンに対する反応性は5HTよりも大であった. エルゴノビンに対する反応は動脈病変が軽度の時は正常血管と変わらないが, 病変が中等度進展すると反応性は著名に亢進し, 病変が高度になると反応性亢進は消失した. 3.脂質蓄積の機序-マクロファージを用いてβ-VLDLの細胞内取り込みはCa^<++>指抗剤であるTMB-8により飽和曲線を描きながら増大し, 脂質取り込みに対するCa^<++>の重要性を示した. 4.アポ蛋白の糖鎖構造-正脂血健常者から遠心分離したアポ蛋白B-100のアスパラギン結合糖鎖構造を分析したところ, 中性画分(N)と二つの酸性画分(A_1, A_2)に分離され, その比は3:4:3であった. さらに分析するとNは高マンノース型, A_1, A_2は2本鎖の複合型糖鎖であることが示された. 現在WHHLウサギにおいても分析を進めており, 今後この生理的意義についても検討を加えたい. 以上の様に本研究において動脈硬化の発症と進展に関して新知見が得られたので今後もこれらの成果をさらに発展させたい.
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