研究概要 |
前年度は, 実験的急性コクサッキーB3ウイルス性心筋炎マウスの房室刺激伝導系特殊心筋病変の光顕, 電顕的観察を行った. 今年度は, 同モデルにおける連続心電図記録(ホルターモニター)による不整脈の解析と刺激伝導系を含む心臓の病理組織学的検索を行い, 両者の関係につき詳細に検討した. 結果は, 1)心筋炎における不整脈の対くは一過性のため, 心電図の連続記録により初めて明かにされた. 2)不整脈は高頻度にみられ, 洞房ブロックまたは洞停止80%, 2または3度房室ブロック30%, 上室性期外収縮25%心室性期外収縮10%, 心室頻拍5%であった. 3)急性心筋炎に際して臨床上とくに重篤と考えられている房室ブロックや心室性期外収縮は, 心筋組織病変がより強い個体に, 病変が最も高度な時期にほぼ一致して認められた. 4)心筋組織病変の部位と不整脈の種類に関連が認められた. すなわち, 心室性期外収縮, 心室頻拍をきたした個体では心室の病変が広汎かつ高度で, 上室性期外収縮例では心房病変が強かった. また, 房室ブロック例では房室伝導系特殊心筋(房室結節, His 束, 左脚, 左脚)に病変認め, 洞停止例の洞結節に壊死がみられた. さらに, 電顕的観察により, これらの刺激伝導系特殊心筋に分布する神経終末に種々の変性所見を認めた. 上記のごとき実験的ウイルス性心筋炎における連続心電図記録(ホルターモニター)による不整脈の解析を用いた不整脈の病理組織学的背景に関する検討については今まで報告されておらず, 新たな知見と考えられる. また心筋炎の刺激伝導系において電顕的に神経終末の変性を認めたことは極めて興味ある所見でありその意義につき今後さらに検討を要する. 以上の結果の一部は, 第10回心筋代謝研究会および第7回国際心臓研究学会日本部会に於て報告し, 第52回日本循環器学会学術集会に於て報告する予定である.
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