研究概要 |
人乳中の分泌型IgAは種々の抗体活性を有し、この経口投与は免疫不全症などでみられる難治性下剤症の治療に効果があることが知られている。しかしこの分泌型IgAの分離は煩雑で容易ではない。1985年Roque-BarrairaらはJackfruitレクチン(jacalin)がIgAと特異的に結果することを報告したことに着目し、このレクチンについて(1)IgA結合特異性の検討、(2)特異性の発現機序の解析、(3)レクチンaffinity法による分泌型IgAの簡易分離法開発、(4)同法によるγグロブリン製剤からのIgA除去の可能性、(5)本法で得られた分泌型IgAの経口投与の効果の検討について研究を行なった。 (結果) (1)IgA特異性はIgAの2つのサブクラスのうちIgA1のみにみられた。IgA2は結合しない(J.Immunol.Methods 88:171,1986) (2)このレクチンのIgA1特異性はIgA1にのみ存在するGolβ1ー3GlcNAc糖鎖によることが明らかとなった。(Molec.Immunol.25:69,1988)。 (3)このレクチンのaffinity column法で人乳から分泌型IgA1を簡単に分離できた。(Molec.Immunol.24:1219,1987) (4)ある種のjackfruitレクチン(jacalin-H)はIgAの2つのサブクラスと結合するのみならず、IgM、IgD、IgEとも結合することを見出した。ただし正常のIgGとは結合しない。ところがIgGでも凝集体を形成したり免疫複合体となるとjacalin-Hとの反応がおこった。このことはjacalin-Hは糖特異性が低いことを意味するが、この性格を利用してγグロブリン製剤から正常IgG以外の免疫グロブリンおよび凝集体、免疫複合体を除去することが可能となり、安全なγグロブリンの精製に正しい方法を提供した。(Clin.Chim.Acta 174:15,1988,Vox Sang.Submitted.)
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