研究概要 |
小児期造血器腫瘍の細胞異質性と病態について各種モノクロナール抗体によるPhenotyping、Flow cytometryによるDNA stemlineを中心に研究を行った。小児急性リンパ性白血病(ALL)の230例をモノクロナール抗体;β-1,β-2,β-4,J-5,T-1,Leu-1,Leu-9,T-3,T-4,CD6,T-8,T-11,OKT-9,OKT-10,MY-7,MCS-2,MO-1を用いて4型に分類し検討した。common ALL188例(81.9%)では抗体反応率はJ-5 100%,Ia100%,β-4 97%,β-1 30%,細胞質内μ鎖16%で、common ALLのなかでpre-β ALLの予後は不良で、年令が高くなるにつれてβ-1陽性率が高くなり、3年寛解率はβ-1陰性ALLの95.7±2.9%に対し55.5%で予後は有意に不良であった。DNA aneuploidy出現率も2.1%と低率でpre-β ALLの占める割合が高い(21.4%)。unclassified ALLは各種抗体に反応しない【I】群(8.3%),抗顆粒球・単球に反応する【II】群(19.0%),β-4陽性の【III】群(72.2%)に細分類され、【II】群には長期寛解がえられていない。T-ALLの抗T・リンパ球抗体との反応は多彩で、common ALL,unclassified ALLに比べて予後は不良であった。Flow cytometryによるDNA stemlineの検素は未治療急性白血病124例についてDNA指数(DI)を算出して検討した。35例(28.2%)にDNA aneuploidyを認め、病型別ではANLL(11.5%)に比べALLに32.6%と高率で、とくにCALLA陽性のcommon ALLは39.4%と最も高く、T-ALLは0%であった。common ALLの平均DIは1.25でunclassified ALLやANLLに比べて高値でANLLのDNA aneuploidy頻度は低い。予後の関連で、ALLのDNA hyperploidyの26例では再発は2例のみで、DNA diploid49例の28例に比べて意解期間の有意の延長がみられた(P<0.001)。この成績よりhyperploidのDNA stemlineは薬剤感受性が高く、diploidのDNA stemlineは薬剤耐性になり易いことが推測された。Methotrerateの体内薬物動態の研究では経口大量投与ができることを明らかにした。
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