研究概要 |
小児期造血器腫瘍の細胞異質性と病態をFlow cytometryによるDNA aneuploidy,細胞周期,各種モノクロナール抗体によるphenotypingと臨床特性および抗癌剤の体内薬物動態につき検討した. 小児ALL 205例の細胞表面マーカーの解析では, common ALLが82.9%をしめ, なかでも細胞質内に鎖をもつPre-BALLが16%で, このPre-BALLとくにB-A抗体陽性群では3年〓解率が55.5%と陰性群のcommon ALLの95.7%に比べ有意に低く, 予後不良であることを明らかにした. 各種抗体に反応しないunclassified ALLはI, II, III群に細分類が可能で, 抗顆粒・単球に反応するII群には長期生存例がなく予後不良であることが示唆された. FALLの抗T・リンパ球抗体に対する反応は多彩で予後不良群であった. リンパ球関連抗原と顆粒球関連抗原の両方に反応するAoute Mixed Lineage Leukemia(AMLL)が6例(17.6%)にみられるが, 顆粒球抗体に対する反応性はいづれも弱かった. AMLLの発癌年齢は他のALLに比べ高い傾向があり, 今後予後との検討が必要であろう. DNA stemlineの検索では, DNA aneuploidyが28.2%にみられ, 病型別ではANLL(11.5)%に比べてALLでは32.6%と高率で, DNA aneuploidy群の予後良好であった. とくにCALLA陽性のcommon ALLでは39.4%と最も高く, T-ALLでは0%であった. DNA diploid群のS期細胞比率は12.1±8%でANLLの6.3±4.6%に比し高く, 各種予後因子との関連においてもいずれも予後不良群に高い傾向がみられた. 抗癌剤Methotrexate(MTX)の体内薬物動態の研究では, MTX大量療法における中枢神経系への薬物移行を髄液/血中%濃度で検討し, 中枢神経系白血病患児では非発症患児に比べて移行が有意に高いことを明らかにした. また, 経口による薬物動態で225〜1,500mg/m^2におよぶ大量経口投与が可能で, 最高血中濃度は3.0〜5.66μMがえられた. 今後至適濃度維持のための投与スケジュールの研究が必要になると考えられた.
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