研究概要 |
昭和61年度の研究により, 表皮細胞(EC)を用いて誘導されるアロ抗原に対する遅延型過敏反応(DTH)は,紫外線(UVB)を予めECに照射すると反応が抑制されることが明らかとなった. 今年度は,このようなUVB量照射ECによって感作されたマウスの脾細胞の,アロ抗原に対するcytotoxic T細胞(CTL)活性,および,皮膚移植拒絶反応について検討を加えた. CTL活性は,ECで感作されたマウスの脾細胞を用いてprimary CTLを行なったところ,ほとんど認められなかったため,感作に用いたと同系マウスの脾細胞を放射線照射後,in vitroでcoーcultoreし,in vitro stimulationを行なった. その結果,主要組織適合抗原(MHC)の違いのいかんにかかわらず,ECで感作されたマウスの脾細胞にはアロ抗原に対するCTL活性が明らかに認められた. 更に,その活性は,予めUVB照射をうけたECでマウスが感作された場合には,明らかな抑制をうけることも明らかとなった. これらのことより,UVB照射ECによる感作では,UVB非照射ECに比べて,マウスは,DTH反応,CTL活性のいづれもが抑制をうけることが明らかとなった. そこで,次に,このような抑制をうけているマウスにおける皮膚移植拒絶反応について検討した. その結果,ECで感作されたマウスに感作したECと同系の皮膚移植を行なうと,その皮膚は2次反応の型での拒絶をうけた. しかし,UVB照射ECで感作された場合には,皮膚は一次反応の型での拒絶をうけた. このことはUVB照射によりECのalloantigenieityが抑制されたものと考えられる. 従来より,UVB照射の標的は表皮ではランゲルハンス細胞(LC)であるとされており,以上の結果は,LCがDTH反応のみならず,CTL活性の誘導や,皮膚移植拒絶反応においても重要な役割りを果していることを示唆しているものと考えられる.
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