研究概要 |
<昭和63年度研究実績>これまでに(1)B_<16>マウスメラノーマ細胞の高転移株と低転移株を用い、また更に正常皮膚線維芽細胞とその悪性細胞である線維肉腫細胞を用いて、各種プロテアーゼインヒビターがこれら細胞のプロテアーゼ産生あるいは活性に及ぼす影響を比較検討してきた(Nakao et al.Int.J.Biochem,Comp.Biochem.Physiol,Kurita et al,Chin.Invest.Dermatol,submitted)。(2)また、ケラチノサイト由来の良性及び悪性皮膚腫瘍塊を用い種々のプロテアーゼ活性を比較検討し、悪性度の高いものほどタイプI及びIVコラゲナーゼ活性が高いことを報告してきた(Tsuboi lt al,J.Invest.Dermatol.)。(3)本年度は、in vitroにおいて腫瘍細胞(線維肉腫細胞とメラノーマ細胞)と腫瘍周辺の構成成分(線維芽細胞や細胞外マトリクス)との相互関係を各種プロテアーゼをマーカーとして検討してきた。その結果、線維肉腫細胞は、正常ヒフ線維芽細胞内のカテプシンB及びヘモブロビンハイドロラーゼの産生を賦活化せしめるような低分子物質を産生放出していることを報告した。またこの物質はメラノーマ細胞では認められなかった。(4)さらに、細胞外マトリクスが線維肉腫細胞の細胞内プロテアーゼに及ぼす影響を検討したところ、フィブリン、コラーゲンともに線維肉腫内カテプシンB活性を上昇させることが認められた。(栗田ら、日皮会誌)。このことは腫瘍細胞と間質正常成分及び正常細胞の相互関係の存在を示唆するものと思われる。さらに本年度は腫瘍細胞周辺の防御機構を検索するため皮膚悪性腫瘍塊のプロテアーゼインヒビターの局在を各種プロテアーゼインヒビターの抗体を用い、免疫、織学的に検討し興味ある結果を得つつある(矢口ら、日皮会誌、投稿中)。
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