研究概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus,HPV)は, 皮膚や粘膜に種々の疣贅を発生させるが, 一部の悪性腫瘍細胞中にHPV・DNAが存在することから, これらの悪性腫瘍の発生にこのウイルスが関与していると考えられている. われわれは外陰部を除く皮膚ボーエン病16例について, DNAの分子間雑種形成法によるHPV・DNAの有無についての検索を行ったが, 4例にHPV・DNAが認められた. そのうち2例は2型であり, 他の2例はそれぞれ5型あるいは2型と相同性のあるHPV・DNAであった. また臨床的に尖圭コンジロームと診断された男性43例, 女性15例, 合計58例の外陰, 肛門部の疣贅について,SDS, プロティンアーゼK, フェノールによりDNAを抽出し, dot hybridization法により, HPV・DNAの存在をスクリーニングし, さらに各型のHPV・DNAプローブを用いてSouthen法, in situ hybridization法を行った. その結果, 6型が35例, 11型が13例, 2型および16型がそれぞれ1例に検出され, 検出率は86.2%であった. 通常, 子宮頸癌, 外陰部のボーエン病, 60wenoid papulosisから分離されるHPV16型のDNAが良性の尖圭コンジロームから検出されたことは注目に値する. さらにわれわれは39歳, 男性の疣贅状表皮発育異常症患者からクローン化したHPV5型DNAの7746の全塩基配列を沢定した. この結果を米国に於いて別個に行われたHPV5型DNAの解析結果と比較すると, 9塩基のみに相違がみられたが, 他はすべて一致していた. 現在, 2の塩基配列を他の型のHPV・DNAのそれと比較検討し, HPV5型に特異的と考えられ, 初期遺伝子にコードされている蛋白の合成を行い, それらの蛋白の特異性についての検討を行っている.
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