研究概要 |
ヒト乳頭腫ウィルス(human papillomavirus HPV)は、皮膚や粘膜に種々の疾 をつくるが一部の悪性腫瘍細胞中にHPV・DNAが存在することから、これらの悪性腫瘍の発生にこのウィルスが関与していると考えられている。HPVは塩基配列の差によって現在58型に分類されているが、悪性腫瘍から検出されるウィルスは特定な型に限られており、疣贅状表皮発育異常症患者から分離された5,7,8,20型などのウィルスと主として子宮頸癌組織からクローニングされた16,18,31,33,35型などのウィルスである。われわれはビオチン標識した各型のHPV・DNAプローブを用い型特異性のあるin situ hybridizaton法により尖圭コンジロームと診断した64例の外陰、肛門部の疾患についてHPVの型の検索を行った。その結果6型が61%、11型が22%を占め、2型が1例検出され大部分が良性の疣贅から検出される型であったが、2例からは通学悪性腫瘍から検出される16型が検出されている。疣贅状表皮発育異常症については、39歳男性の患者からクローニングしたHPV5型DNAの7746の全塩基配列を決定した。この結果を米国において別個に行なわれた5型DNAの解析結果と比較すると、9塩基のみに相異がみられたが、他はすべて一致していた。この塩基配列を他の型のHPV・DNAのそれと比較し、5型に特異的と考えられ、初期遺伝子にコードされている蛋白の合成を行い、特異性についての検討を行っている。また疣贅状表皮発育異常症の良性皮疹から抽出した抗原で家兎を免疫し、本症の良性および悪性の腫瘍細胞のみと特異的に反応する組織抗原に対する抗体を作成した。さらに本症患者の悪性腫瘍の腹腔内転移巣から組織培養細胞株を樹立し、この培養細胞中にHPV5型のDNAが存在することを証明している。
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