研究課題
一般研究(B)
陽子線治療法は、近時、最も合理的ながん治療技術の1つとして開発され、その臨床適用においても優れた治療成果が示されていることから、今後この技術の進歩、充実によるがん治療成績の向上に大きい期待が寄せられている。上記治療成果は、がん病巣をその形状に合わせ選択的に照射すると言うこの治療法に特異的に開発された技術、装置によるものであり、その目的に応じた設備は既に作製されている。しかし、現在この治療法の充実と発展に関する最も重要な課題は、病巣輪郭の把握手段である。すなわち、上記設備によって選択的に照射すベきがん病巣の輪郭が、現時点における映像診断の技術では、高い精度で把握出来る深部臓器がんが少ないため、この優れた治療技術が適用し得る症例は極めて限られており、また十分満足される成果も得難いことから、その適用可能範囲を拡大し、更に合理的な治療成果を得るためには、病巣の輪郭を把握する手段が必要となるものである。また、上記のごとき病巣の選択的照射においては、照射野の照準にも、同様に高い精度の病巣輪郭の把握が要求される。かつる病巣輪郭把握の作業は、臨床的技術によってのみ遂行し得るものであることから、本研究では、昭和61年度より文部省科学研究費の援助の下に、放射線治療医と各臓器担当の医師団との共同作業によって、開創操作を加えることなく、体外部より深部臓器病巣の境界組織内に標識を埋没し、その標識のX線像に基づいて病巣輪郭を把握する技術を開発した。この研究により、陽子線治療の上記重要課題の多くが解決されたことから、この治療法は今後更に広い範囲の臓器がんへの適用が可能となり、治療成果も一層改善されることになると考える。
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