研究概要 |
1.赤血球膜変化の評価基準 造影剤添加後の血液をグルタルアルデヒドで固定した後、倒立微分干渉顕微鏡で観察し、藤井等の赤血球膜変形分類(-3〜0〜+3)を基準として造影剤による赤血球膜変形程度を評価した。末固定標本は血漿で希釈し連銭形成、凝集の有無を検討した。 2.イオン系および非イオン系造影剤の物理化学的性質と赤血球膜の変化イオン系造影剤は侵透圧が高い程,濃度が高い程,赤血球膜の変形を来し易く、膜は外方突出を示した。非イオン系造影剤はイオン系に比して、侵透圧が低く、イオパミロン,イオヘキソールでは赤血球膜変化は弱かった。しかし、同じ非イオン系のアミパークでは、低侵透圧にもかかわらず、強い赤血球膜変形を来した。非イオン系造影剤はイオン系と異なり,親水性が弱く、油水分配係数が大きい程、アミパークのように強い赤血球膜変形を生じた。超音波細胞破砕器で造影存在下の赤血球を小胞体化し、その内部に造影剤を内封させて、造影剤の赤血球膜通過性を調べたが、造影剤は赤血球膜を通過し、細胞質内に侵入する事はなく、赤血球膜の変化は膜自身の変化である事が証明された。 3.各種疾患における赤血球へのヨード造影剤の影響 骨髄腫では赤血球の連銭形成がイオン系造影剤およびアミパークで促進され、連銭塊が巨大化した。糖尿病,ネフローゼ症侯群では、それぞれ血糖が高い程、また血中アルブミンが低い程、強い外方突出を来し、非イオン系のイオパミロンでも軽度の+1の変形を来した。更に、低ベータコレステロール血症でも強い外方突出を示した。従来、イオン系造影剤投与が禁忌、又は要注意と言われてきた疾患に於て、造影剤による赤血球膜変化が強く、それは造影剤の副作用予知の可能性を示した。
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