研究概要 |
1.実験には, 10匹の慣れた成熟ネコを用いた. 慢性的に視床下部腹内側核(VMH)に植え込まれた電極を通して電気刺激することによって得られる防御攻撃反応のうち, 指向性攻撃とヒッシングとを選び, それらの閾値(挑発下, 非挑発下)に対するセルレイン(0.1, 1.0, 10.0μg)の脳室内投与の影響を調べた. その結果, 以下のことが明らかとなった. (1)セルレインは, 測定された閾値の全てを, 用量依存的に低下させ, 一般活動性の上昇をも伴った. (2)予め, ハロペリドール(0.5mg/kg)を腹腔内に投与しておくと, セルレインの上記効果は発現しなかった. セルレインの上記効果がドーパミン作動薬によるものと同質であることも考慮して, セルレインは, ドーパミンとのsynergyを介して, VMHの興奮性を促進するのであろと推測した. また, 抗精神病作用も期待しにくいものと思われた. 2.65匹の成熟ネコを用いて, 刺激部位や刺激電流の強さと防御攻撃反応の性状との関係を調べた, その結果, 比較的に低い閾値(〈100μA)を持つ指向性攻撃はVMHの背側半分およびその直前の刺激で生じ, その周辺部では閾値が高くなることが判明した. さらに, 後退反応(多くは指向性攻撃へと発展し, 背丸め反応を伴う)は, VMHの腹側半分の刺激で現われることもわかった. また, 威嚇・自律神経反応はみられるものの移所行動としては常同的歩き廻りを生じる部位は, 上記諸領域以外の内側下野に散在していた. 3.視床下部性防御攻撃反応に対する中脳中心灰白質破壊(PAG)の影響については, 刺激と同側PAGに2個の小破壊巣を作る実験を進めている. 4, 側坐核破壊後も, 上記防御攻撃の諸閾値は変化しないようである. 5, 無麻酔, 非拘束下のネコ扁桃核から得られる細胞外単一神経活動が, 環境刺激の性状に応じて変化する所見が得られつつあるが, まだ記録されたユニット数が少く分析は今後の課題である.
|