1.扁桃核神経活動と環境刺激、情動行動、ドーパミン作動薬に関する研究、実験には成熟ネコ7匹(凶暴なネコ5匹、慣れたネコ2匹)を用いた。環境刺激としては、純音(16odb、0.5、2、8KHZ)、小動物の玩具生きた小動物、および人間を用いた。合計32個のユニット活動が記録されたが、その記録部位は基底外側核の底部および梨状葉皮質であった。12個のユニットが何らかの環境使激に対して反応を示し、それは次の3つに分類された。Ii:全ての刺激によって発射頻度が抑制された(4個)。Ie:全ての刺激によって発射頻度が増加した(4個)。II:刺激の性質によって、即ち、ネコに逃避・攻撃行動をひこ起こすような刺激(人間、あるいは空気の吹きつけ)であるか静かな接近行動をひき起こすような刺激(小鳥、金魚、マウス、ネコなどの小動物)であるかによって異なる反応を示した(4個)。純音や玩具へは、汎化が生じた場合のみ反応がみられた。IiとIeは、非特異的情動興奮を反映し、IIは特異的情動興奮に対応した変化であると考えられた。ドーパミン作動薬は、自然発射頻度も変化させるが、環境刺激に対する上記反応の強度を増強する傾向を認めた。今後対象数を増やし、さらに中隔についても検討を加える予定。 2.視床下部性防御攻撃反応に対する側坐核破壊の影響。実験には成熟ネコ12匹が用いられた。その結果、これまでの報告や仮説に反し、側坐核を両側性に破壊しても、視床下部性防御攻撃反応の諸閾値は全く変化せず、この脳部は、怒りの中枢機構には直接関与していないことが示された。 3.同じく中脳中心灰白質破壊の研究。今回、視床下部刺激と同側の2カ所(近位と遠位)に小破壊巣を2段階に分けてつくり、その影響をみた。その結果、これまで著者らが示唆したように、破壊巣が耳孔間線より2mm以上吻側に作られた時に、全ての閾値が上昇することがわかった。
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