研究概要 |
年齢20-27才の心身ともに健康な男子学生11名を被験者として用い, 各被験者について二夜あるいは三夜の夜間睡眠及び覚醒時のポリグラフ記録を行なった. 記録は, 脳波14チャンネル(LF,RF,LC,RC,LP,RP,LO,RO,LmT,RmT,LpT,RpT,Cz,Pz), 水平, 垂直方向眼球運動, オトガイ筋電図を紙記録するとともにデータレコーダに磁気記録した. 実験条件として(1)覚醒・照明下サッケード, (2)覚醒・暗室下サッケー, (3)REM睡眠時のREMsの各眼球運動の開始時点で揃えて加算平均した眼球運動関連電位, (4)REM睡眠時のFLUSH, (5)NREM睡眠時のFLUSHに対する加算平均視覚誘発電位の5条件を設定し, 結果を比較した. その結果, REMsに対して潜時約180msで頭頂領域中心に広範な領域から陽性成分が出現し, 更に潜時250msで後頭にほぼ限局して陽性成分が出現した. 頭頂領域の陽性成分は, 覚醒・照明下サッケード, REM睡眠時のFLUSH, NREM睡眠時のFLUSHでも同様の陽性成分が出現したことからREMsに対して特異的な成分ではなく, 非特異的な成分であると考えられる. ただし他の条件では潜時が230-260msと数十ms遅かった. この潜時の差はほぼ眼球運動の持続時間に相当することから, REMsでの陽性成分はREMsの開始時点に同期して出現するPGO-WAVEによって誘発された成分であり, 覚醒・照明下サッケードでの陽性成分はサッケードの終了時点に同期してPGO-WAVEとほぼ同じ部位に出現するEMP(Eye Movement Potential)によって誘発された成分であると推察された. また, REMsに対して後頭領域に出現した陽性成分は, 覚醒・照明下サッケードでも同様の成分が出現し, 暗室下でのサッケードでは出現しなかったこと, 出現部位が視覚野に限局していることから, この陽性成分がREM睡眠時の夢見に伴う視覚活動を反映していると考えられる.
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