研究概要 |
抗うつ薬投与後のラット大脳皮質β受容体減少機構とセロトニン(5-HT)の役割について膜内共役物質を介した生化学的機序を検討した。 1.ミアンセリン(MIA)やマプロテリン(MPR)は従来β受容体を減少しないと報告されていたが、1日2回3日投与の6時間後25%減少することを認め、24時間で急速に回復する。フルオキセチン(FLX)や5ヒドロキシトリプトファン(5HTP)をMIAやMRPと伴用するとβ受容体の減少は促進され24時間以上減少が維持される。すなわちシナプス内5-HTの増加はβ受容体減少を促進維持させる。 2.プロティンキナーゼC活性化薬12-0-テトラデカノイルホルボール13-アセテート(TPA)は抗うつ薬によるβ受容体の減少を促進し、それ自体もβ受容体を減少した。一方Cキナーゼ阻害薬(H-7)は抗うつ薬によるβ受容体減少に若干抑制する傾向を示した。このことから、増加した5HTによるβ受容体減少の促進はCキナーゼの活性化による可能性が示唆された。従来抗うつ薬によるβ受容体の減少はノルエピネフリンの増加のみによると考えられていたが、5-HTイノシトールリン脂質-Cキナーゼを介した異種性脱感作によってβ受容体-アデニル酸シクラーゼ系が調節されていることが示唆された。 3.デシプラミン(DMI)とMIAの14日間投与24時間後の大脳皮質膜のGTP結合調節蛋白(NsとNi)のαサブユニットをコレラ毒素と百日咳毒素を[【^(32)P】]NADにより、ADPリボシル化して標識し、オートラジオグラフィーを施行して比較した所、両抗うつ薬投与後Nsd,Nidともに量的変化を認めなかった。 4.MIA投与後β受容体が減少した状態に蛋白合成阻害薬サイクロヘキシシドを脳室内に注入した結果、MIA最終投与75時間後もβ受容体は減少し続けた。この結果より、抗うつ剤によるβ受容体減少は細胞内移行による実質的受容体の消化によることが示唆され、その回復は受容体蛋白の合成によるものであることが示唆された。
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