研究概要 |
抗うつ薬投与後のラット大脳皮質β受容体の減少機構とセロトニン(5ーHT)の役割について情報伝達系の生化学的関連をin vivoならびにin vitroのスライス実験により検討し,プロテインキナーゼとβ受容体のリン酸化反応の関与とその意義を考察した,デシプラミン(DMI)とミアンセリン(MIA)をラット皮下に埋め込んだ浸透圧ポンプにより7日間持続的に投与した場合,DMIとMIAのいずれも約50%の著明なβ受容体の減少が認められた. この浸透圧ポンプの効果は,ヒトより半減期が著しく短い抗うち薬は1日1回投与や最終投与24時間後に屠殺する方法では慢性投与の効果を得られないことを示し浸透圧ポンプの使用などが必要となる. 大脳皮質スライスにおいて5ーHTは1ーイソプロテレノール(ISO)によるβ受容体の減少には影響を与えず,再インキュベーションによるβ受容体の回復を抑制する傾向を示した. ホルボールエステル(TPA)の脳室内注入によるプロテインキナーゼC(PKーC)の活性化はβ受容体を減少し, DMIのβ受容体減少率を促進したが,DMIによる最大のβ受容体の減少に対しては相加的ではなかった. これより,イノシトールリン脂質代謝を介して活性化されたPKーCがβ受容体の減少を調節している可能性が示唆された. また,β受容体のリン酸化を間接的に知るために,大脳皮質β受容体を[^<125>I]iodohydroxypindrol(ICYP)ーdiazirineを用いてフォトアフィニティー標識を行った. その結果,分子量51Kと62Kのポリペプチドが標識された. DMIを7日間持続投与した膜標品ではこの2つのポリペプチドの電気泳動上の移動が遅れ,見かけの分子量は若干大きくなった. これはβ受容体がリン酸化されpiが取り込まれたためであることを示唆する所見と考えられる. 大脳皮質のプロテインキナーゼA(PKーA)活性はDMI 14日間投与後有意に減少した. 一方,PKーC活性は増加傾向を示した.
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