研究概要 |
甲状腺ホルモン細胞貭受容体に多様性のあることを発見した. 精製することにより,同一分子内で構造変化が誘導される機構の存在が示唆された. この多様性は,分子(蛋白)の酸化遷元系に依存しており,これらの補酵素の濃度化がそれぞれの存在率を決定する. 一方,これらの受容体は,それぞれ特異的機能を有する. すなわち,各種のホルモン結合により,安定性という意味で機能が分化される. 一つは,細胞貭内に大量の結合容量を誘導し,細胞内ホルモン濃度を維持する機能を有し,もう一つは核内へのホルモン能動輸送を積極的に行う. 後者は, 細胞の核基貭に存在し,分子量は,受容体が58000であるのに比べ著しく大きく,約200000であった. 核のDNas処理では安定であるが,0.5MNaClによって溶出される蛋白で受容体ーホルモン結合物貭受容蛋白と名付れられた. この蛋白に結合した 受容体ーホルモン結合物からのホルモンの核受容体への移行過程に関する生化学機序は伴っていない. 細胞質受容体のホルモン親和性が核受容体より小さいことからおそらくこの親和性の差による受動的受け渡しが生じるものと思われるが,ホルモンが親水性に欠けることからDNA結合の核受容体へ容易に受け渡しされる可能がある. また,核基質に存在するADPリボシルトランスェラーゼと受容体ーホルモン結合物受容蛋白が酷似した構造をとることが判り,あるいは,ADPリボシレーションを仲介した機能,すなわちち,DNAのrepair,などDNA構造の変化を誘導し,gene発現に直接調節作用を行う可能性も考えられた.
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