研究概要 |
甲状腺ホルモン受容体として、細胞核、細胞質、ミトコンドリアに存在する蛋白を分離、その機能を分析してきた。本研究者は、甲状腺ホルモンの細胞内輸送、および遺伝子発現調節の2点から細胞質受容体の核でのホルモン作用調節を主眼に研究を行った。細胞質(ラット腎)より分子量58,000の蛋白T_3受容体を精製した。この受容体(CTBP)は、NADPH非存在下では、T_3結合活性を有せず、NADPHで最大結合容量が増加した。CTBP1分子に1分子のT_3を結合する。また、NADPH非存在下では、T_3のCTBpからの解離が促進された。一方、このCTBPは、DTT1.0mM存在下でNADPにより活性化され、その結合親和定数はNADPH存在下のものと異ならなかった。この場合も最大結合容量の増加が認められなかったが、LーT_3に比べDーT_3に親和性が高かった。 このNADP活性型CTBPは、ラット腎核に結合した。核を0.3MNaCl処理でこの結合活性は消失しなかったが、0.5MNaClにより抽出された。このNADP活性型CTBP受容体は、分子量20×3で細胞核T_3受容体とは異なると考えられた。 これらの事実より、T_3が核に存在する特異的受容体を介して遺伝子発現を調節することから、CTBPーNADPーCTBP受容体を経たT_3輸送が、甲状腺ホルモン作用の重要な調節機能を員っているものと考えられた。
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