研究概要 |
I型糖尿病の発症に関しては、膵ラ島細胞膜抗体(ICSA)をはじめとする特異的自己抗体の出現という体液性免疫異常のみならず、細胞性免疫異常も深く関与していることが最近明らかになりつつある。我々が得た新知見は、1.単クローン性ICSAである3A4を精製しこれを家兎に免疫して抗血清を作製した。この抗血精は3A4と結合しかつ3A4のラ島細胞への結合を抑制したことより、抗イディオタイプ抗体を含んでいると考えられる。この抗血清を糖尿病発症前のI型糖尿病のモデル動物であるNODマウスに投与したところ、膵ラ島炎の抑制が認められ、本血清はidiotypic antiidiotypic interactionを介してNODマウス膵ラ島炎を抑制することが明らかとなった。2.単クローン性ICSAに対応する抗原の同定をSDS-PAGEによるオートラジオグラフィやイムノブロッティングで解析した結果、3A4に対する抗原は分子量64Kdの蛋白であり、プロテアーゼやノイラミニダーゼに対する反応性よりその抗原性に糖鎖の存在が重要であることが明らかとなった。さらに新たな単クローン性ICSAである5C12と3A4では各々の対応する膵ラ島細胞膜抗原が異なっており、臨床上報告されているICSAの多様性が単一クローン性抗体の上でも認められた。 3.NODマウス膵ラ島炎に関与する細胞を光顕的,電顕的観察によって検討したところ、その大部分がTリンパ球であり、一部マクロファージの存在も認められた。現在、リンパ球やマクロファージの表面抗原に対する単クローン性抗体を用いたflowcytometry(FACS)法により、経時的に浸潤細胞の性状を明らかにするとともに、T細胞系異常とICSA産生との関連、さらにこれらのinteractionに対するマクロファージの影響等をインターロイキン【I】や【II】の測定を加えて検討中である。
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