前年度までは、I型糖尿病に認められる液性免疫異常、特に膵ラ島抗原に対する自己抗体である膵ラ島細胞膜抗体(ICSA)の特性や病因的意義について、私達が作製した単一クローン性抗体を用いて解析してきた。昭和63年度はこれに加えて、本疾患に出現する種々の細胞性免疫異常の病因的解析を、優れたモデル動物であるNODマウスを用いて開始した。以下、本年度中に得られた知見を列挙する。 (1)NODマウス脾細胞中の活性化マクロファージの存在 同マウスの脾細胞をT細胞に対するマイトジェンであるコンカナバリンA(ConA)で刺激しても、細胞増殖反応やインターロイキン2(ILー2)の産生能が低下しており、このT細胞反応の抑制に活性化マクロファージが関与していることを明らかにした。 (2)NODマウスにおけるサプレッサーT細胞誘導能の低下 ConAにより活性化されるべきサプレッサーT細胞の誘導能がNODマウスでは低下しており、このことが本マウスにおける種々の免疫亢進状態の原因となっている可能性を示唆した。 (3)NODマウスにおけるILー2レセプター発現能の低下 (2)と関連して、サプレッサーT細胞の誘導能の低下は、T細胞増殖因子であるILー2に対する高親和性レセプターの発現能の低下に起因していることを明らかにした。 (4)細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のNODラ島傷害性 NODマウスラ島炎部に浸潤している単核細胞のうち、CTLが直接的なエフェクター細胞として膵ラ島β細胞破壊に関与していることを種々の免疫学的手法を用いて明らかにした。
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